2017年05月25日
にじって入るにじり口
こんにちは。
頭の中が茶室になってしまった静岡の畳屋の姉さんです。
先日、このようなお部屋の畳を施工させていただきました。この写真を観た時、私は畳コーナーの向こうにある小さな窓が、茶室のにじり口に見えてしまいました。

実際あそこの窓から入ってみるのも面白いかもしれないな。でもにじって入るにはやはり小さすぎるかな。くまのプーさんのように頭から突っ込んでくれば入れそうだけれど・・・お腹でつっかえたらどうしよう・・・などと妄想が膨らみ・・・。

「にじる」というのは、正座をしたまま手をグーにして体の左右のやや前方に置き、手の親指で畳(床)を押しながら体を前に進めることです。
実際、茶室のにじり口はどのくらいの大きさなのでしょう?どうやら高さ二尺二寸(66~67cm)、幅二尺一寸(63~64cm)が標準のようです。ということは、この写真の窓がそれよりも大きいサイズならばにじって入れるということですね。


ところで茶室の「にじり口」ですが、なぜこのように小さくて入りにくい入り口になったのでしょう?それにはいくつか理由があります。
1.武士が刀のような武器を持って入れないようにする為。
2.武士も商人も頭を下げないと入れないことから、茶室の中では皆平等という意味。
3.茶室に入ったら非日常の別世界。小宇宙を感じる侘び・寂びの心を得る為。
4.茶室が実際よりも天井が高く奥行きが感じられるという視覚的効果。空間演出。
5.狭い茶室は四方の壁で強度をもたせているので大きな入口にすると強度が弱くなり、茶室の大きさとの見た目のバランスも悪くなるから。
にじり口を入った瞬間の景色・・・茶室はこの景色を一番意識して設計されています。そこで、にじり口を入ってもすぐに立ち上がらず、一瞬息をついて茶室を見渡してください。
それにしても千利休は、演出家や建築士の才能もあったのですね。
以前、テレビで観たのですが、次のような逸話が残っています。
ある時秀吉が、茶室周辺に沢山の夕顔が満開になっていると聞き、それを楽しみに茶室に出向いたところ、なんと夕顔が全部摘み取られていました。がっかりしながら茶室に(おそらくにじって)入ると、その床の間に一輪の夕顔がいけてあったそうです。茶室の空間も特別、お客様である秀吉様も特別という千利休の演出ですね。
しかしこの千利休の計算高い程の才能が、やがて秀吉には恐怖に変わっていったのではないでしょうか。
茶室から見える芸術性、精神性、歴史・・・。奥が深いですね。
畳を通してお客様に感動とやすらぎをお届けします。
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Posted by 畳屋の姉さん at 11:45│Comments(0)
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